フィリピンの医療費と医療保険、そして国民の病気について説明します。
記事中の金額はフィリピン通貨のペソで表示しています。
2021年10月現在、1ペソ=2.24円。
たとえば、1,000ペソなら2,240円と考えてください。
また、ペソは「P」と記載しています。
国民ひとり当たりの医療費
フィリピン統計局(PSA)が、2021年10月14日に発表した資料によると、2020年の一年間で、フィリピンの国民が支払った保険料は、1人当たりP8,216.42でした。
- ひとり当たりの医療費の推移
年 | ひとりあたりの医療費 | 前年比 |
2014年 | P4,924.41 | |
2015年 | P4,850.25 | 98.5% |
2016年 | P5,301.67 | 109.3% |
2017年 | P5,745.09 | 108.4% |
2018年 | P6,952.59 | 121% |
2019年 | P7,422.69 | 106.8% |
2020年 | P8,216.42 | 110.7% |
直近の7年間で、医療費の支払いは、約167%も増えています。
- 医療費の支払先の内訳
病院(43.8%)
薬局(28.2%)
その他(20%)
医療保険で治療した病名
医療保険をつかって病院で治療した病気の種類です。
病名または原因 | 全体に占める割合 |
栄養失調 | 13.4% |
呼吸器感染症 | 10.7% |
心血管疾患 | 10.3% |
HIV,AIDS,その他の性感染症 | 8.3% |
妊娠・出産 | 8.2% |
ワクチンで予防できる病気 | 5.7% |
その他の感染症・寄生虫症 | 5.2% |
泌尿生殖器系の病気 | 4.9% |
怪我 | 4.3% |
下痢性疾患 | 2.7% |
その他 | 26.3% |
フィリピン人の死因は、心疾患、血管系の疾患が多く、治療費にもそれが表れています。
また、HIVやAIDSなどの悪性新生物が、フィリピンではまだ蔓延していることがわかります。
病院によって差がある医療費
フィリピンの医療費は、私立病院、公立病院、そして町医者と呼ばれる小さな病院、それぞれで大きく異なります。
たとえば風邪など軽度の病気の場合、私立病院ですと、薬代を含めて5千~1万ペソ。
感染症予防対策のための、医師の防護服代まで請求されます。
これが、町医者になると、治療費は2~3千ペソほどです。
- 医療費の明細
ドクターズフィー
治療、検査費
手術の費用
物品の費用(注射器やアルコール綿など)
入院に関わる費用(部屋代や食事代)
医薬品の費用
フィリピンの医療保険
フィリピンでは、基本的に医療保険への加入が義務付けられています。
医療保険の名称は「国民健康保険プログラム(NHIP)」と言いますが、フィルヘルスと言う政府系機関が、医療保険の運営を行っているため、一般的に医療保険のことをフィルヘルスと呼んでいます。
医療保険の加入率は、はっきりした数字がつかめていませんが、加入者本人、およびその家族などの被扶養者をあわせると、国民の9割が加入していると推測されています。
フィルヘルス加入者は、特定の疾病や手術・治療に対して一定額が保険の対象となります。
- 入院(室料、食費、薬剤費、検査費、診察費など含む)
- 一部の外来治療
- 救急外来および移送費用
- 予防サービス
- その他DOHおよびフィルヘルスによって認可を受けたサービス
おおきな手術や高度な治療、また、外来の医薬品代はカバーしていません。
医療保険料
民間企業や政府機関など、フォーマルセクターに勤めている人は、標準報酬月額の額に応じて、異なった保険料率が適用されます。
たとえば月収が1万ペソ以下の人ですと保険料は月275ペソ。
1万ペソ以上4万ペソ未満の場合は標準報酬月額に2.75%を乗じた額。
4万ペソ以上は定額1,100ペソです。
この保険料を雇用主と従業員本人が、折半して支払います。
一方、販売や運転手など、個人事業主の場合、月収が2万5千ペソ以下なら保険料は250ペソ。
2万5千ペソ以上ですと保険料は300ペソです。
但し、60歳以上、およびフィルヘルスから貧困の認定を受けた人は、国や地方自治体が保険料を負担しますので、保険料を払うことなく、医療保険のサービスを受けることができます。