フィリピンは生活保護制度がない!保険に入ってないと大変

現地生活

フィリピンには、お金に困っている人に現金を給付する生活保護制度はありません。

普段から医療保険や社会保険の保険料を支払っている人でしたら、病気になったり失業したときに、社会保障が受けられます。

この記事では、フィリピンの社会保障と、貧困層を救済するプログラムについて解説しますので、お金に困っているフィリピン人の知り合いや恋人がいる方は参考にしてください。

  • 病気や失業でお金に困ったとき、保険に加入している人なら、給付の手続きをする
  • 加入していなければ、所轄機関へ貧困プログラムの受給を申請したり、役場へ相談する
  • いちばん手っ取り早いのは、金貸しや親せきからお金を借りる


順番に説明します。

フィリピンに生活保障制度がない理由

生活保護とは、健康で文化的な最低限度の生活を保障し、自立と就労を支援する国の保障制度のこと。

生活に困窮する国民を支援するこの制度は、日本では生活保護、ヨーロッパでは社会扶助や所得補助制度と呼ばれていますが、途上国には、それに該当する制度はありません。

その理由は、国にそこまでの予算がないから。

また、先進国と途上国の国民性の違いも起因しています。
日本では、困窮していても生活保護は受けたくない、と考える国民も少なくありませんが、もしフィリピンに生活保護制度があったら、きっと貧困層の多くは仕事をしなくなり、生活保護に頼る生活を送るでしょう。

本来の目的である自立や就労支援とはかけ離れてしまいます。

フィリピンの社会保障の種類

フィリピンの社会保障は、疾病や出産、退職時などに手当てが出る社会保険、Social Security System(略称SSS)。

健康保険公社のPhilHealth(略称フィルヘルス)が行っている医療保険。

そして、住宅購入のための持家促進相互基金(略称Pag-IBIG)の3つがあります。

この記事では、社会保障制度と医療保険について説明していきますが、手当や医療費の援助を受けられるのは、一部の人を除いて日ごろから保険料を支払っている人に限られます。

社会保障制度( 社会保険機構 )

SSSが被保険者に支給する社会保険給付は、疾病手当、出産手当、退職手当、障害手当、死亡手当の5つです。


疾病手当の受給資格は、疾病になる直前1年以内に3ヶ月以上保険料を納付した加入者が3日以上入院し、動けなくなった場合で、平均賃金日額の90%(上限は月150ペソ)が、最大120日間支給されます。

保険料の支払い額は、労働者の月額収入の約10.4%で、 従業員の場合は、雇用側がそのうちの約7.07%、労働者側は約3.33%を負担します。

自営業を営んでいる人は申告収入額の約10.4%が保険料となります。


その他、SSSに加入していれば、退職年金、死亡年金、障害年金、また、出産や疾病時には手当てが受け取れます。


Social Security System (SSS)のホームページ (英語)

医療保険(国民健康保険プログラム)

フィリピン健康保険公社が運営する医療保険で、日本の国民健康保険と性格が似ています。

全国民に加入義務があり、入院した場合は、室料、食費、薬剤費、 検査費、診療料が、また、外来医療の場合は薬剤費、検査費、診療費、予防サービス、救急・移送サービスなどが保険適用の範囲となります。


保険料は、政府機関や民間企業に従事する人は標準報酬月額の額に応じた保険料率が適用されるしくみで、例えば月収が1万ペソ以下の人は毎月275ペソ。

個人事業主の場合は、一か月の収入が2万5千ペソ以下なら保険料は250ペソになります。


Philippine Health Insurance Corporation(フィルヘルス)のホームページ (英語)

フィリピンの貧困プログラム

病気になっても治療費が払えない保険未加入者や、食べることにも困っている貧困層をサポートしてくれるプログラムと機関を紹介します。

現金給付プログラム 4Ps

4Ps(フォーピース)とは、児童を対象とした条件付き現金給付プログラムのことで、貧困世帯の18才以下の子ども一人につき、健康増進を目的として500ペソ、教育費用として300ペソ、合計800ペソが毎月支給されます。

受給者は、育児や栄養などの研修や健康診断の受診、学校の授業の出席などが義務付けられます。

受給対象者は、貧困率の高い地域の貧困世帯から選ばれていくので、貧困なら誰もが給付を受けられるわけではありませんが、保険料の支払いをしていない人でも現金が受け取れると言うメリットがあります。


問い合わせ先 社会福祉開発局(Department of Social Welfare and Development)

スポンサードプログラム

フィルヘルスから、最低限の生活を送る収入を得ていないと認定された人は、貧困プログラム(Sponsored Program)によって、保険料の支払いが免除され、それらは国と地方自治体で折半して支払われます。

保険料を支払っていない人でも医療保険が適用されますが、貧困かどうかの判定は対面インタビューで行われるため、その基準ははっきりとはしていません。

地方自治体の支援

役場(バランガイホール)などの地方自治体では、国の貧困支援プログラムとは別に、災害時の緊急支援や、医療支援など、独自に地域住民の生活を支援する活動を行っています。

例えば軽度の疾病やケガでしたら、役場に併設されているヘルスセンターで、無償で治療が受けられ、薬ももらえます。

しかし、これらの支援はキッチリと制度化されているものではなく、自治体の予算次第なところがあります。

また、貧困層を中心に、これらの自治体のサポートを知らない人も多く、利用されていないケースも目立ちます。

役場では気軽に住民の相談に乗ってくれますので、困ったことが起きたら、まずは、自分が住んでいる地区の役場に相談することをおすすめします。

困ったときのお金の借り方

保険には入っていないし、支援プログラムの申請手続きや相談はめんどくさい。

だから、手っ取り早くお金を集めよう。

僕の知る範囲では、このように考えるフィリピン人は少なくありません。

貧困層ならなおさら。
彼らがお金を借りる、または集める主な手段を紹介します。

ファイブシックス

フィリピン人なら知らない人はいないぐらい有名な街の高利貸しで、日本の闇金に近い存在です。

借りたお金を5で割って6掛けた金額を返すので、ファイブシックスと呼ばれています。

例えば1,000円を借りたら1,200円を返済することになるので金利は20%。

注意しなくてはいけないのは、借りた翌日に返しても20%取られることです。

無担保無保証で借りられるので、貧困層を中心に利用されているファイブシックスですが、高金利のため、返済しきれない人もたくさんいるため、フィリピン政府は、インフォーマルなこの闇金業を撲滅していく方向です。

知り合いから集める

お金を借りても返す当てがない人は、「借りる」または「寄付」の名目で親せきや知り合いからお金を集めます。

中には教会に泣きつく人も。

フィリピンには、困っている人を助けると言う互助の文化があるので、貸してと言われてお金を渡したとしても、まず返っては来ません。

貸した人がもし催促しても、「いまはない」の一言で終わってしまいます。

希望の金額が集まるかどうかはわかりませんが、借りても返さないので、この方法はなんのリスクも負担もありません。

フィリピン人女性から「お金に困っているから貸して」と言われた経験を持つ日本人も少なくないと思いますが、それは頂戴の意味です。

フィリピン人女性がお金をせがむ理由と上手な断り方

マイクロファイナンス

主に貧困層を対象に、商売をするための事業資金を、無担保、低金利で融資する公的な制度です。

金利は月2~4%、年24~48%、最大6千米ドルまで融資が受けられます。

マイクロファイナンスを管轄しているのは、民衆信用供与金融会社(PCFC)ですが、お金の貸し出しや審査は、金融機関やNGO、また、協同組合が行っています。

マイクロファイナンスは、日々の生活費の補填には不向きですが、将来のためにビジネスをはじめたいと考えている人には適したサービスです。


PCFCのマイクロファイナンスプログラム (英語)

まとめ

  • フィリピンには生活保護制度がない。理由は国の財政が脆弱なため
  • フィリピンの社会保障は、社会保険、国民健康保険、持家促進相互基金の3つ
  • 保険未加入者や貧困層が支援を受けられる貧困プログラムがある

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