フィリピンは治安が悪い、というイメージを持っている日本人も多いと思います。
実際に外務省や国連の犯罪統計をみても、フィリピンは殺人や強盗、強姦の発生件数が日本と比較して30倍以上高いことが分かります。
海外で殺された邦人数がいちばんおおいのもフィリピンです。
この記事ではフィリピンで起きる犯罪の特徴と、邦人が事件に巻き込まれないために守るべき行動について、フィリピン在住者の僕が解説していきます。
目次
フィリピンの犯罪の特徴
フィリピン国家警察が発表した2018年の犯罪統計によると、警察が把握している犯罪件数は47.5万件です。
そのうち、殺人、暴行傷害、強盗、そして強姦など、いわゆる凶悪犯罪と呼ばれるものが全体の17%を占めています。
そして、凶悪犯罪のうち約10%が、銃器を使用した死亡事件です。
また、世界各国のデータを集計・公表しているワールドデータアトラスの資料によると、2018年、フィリピン国内で起きた殺人事件は6,895件。
(10万人当たりの被害者数6.5人)
この数字は世界ワースト11位で、東南アジアの国々ではいちばん多い件数です。
順位(ワースト) | 国 | 殺人件数 |
1 | ブラジル | 57,358 |
2 | インド | 41,651 |
3 | メキシコ | 36,685 |
4 | 南アフリカ | 21,036 |
5 | アメリカ | 16,214 |
6 | コロンビア | 12,586 |
7 | ロシア | 11,964 |
8 | ベネズエラ | 10,598 |
9 | パキスタン | 8,241 |
10 | 中国 | 7,525 |
11 | フィリピン | 6,895 |
38 | 日本 | 334 |
邦人の死亡事件
フィリピンでは事故やテロを除く、邦人の死亡事件は、2010年-2019年の10年間で32件(年平均3.2件)起きていて、日本人が殺害されている国のワースト1になっています。
年 | 邦人殺害事件 |
2010年 | 5件 |
2011年 | 1件 |
2012年 | 5件 |
2013年 | 1件 |
2014年 | 7件 |
2015年 | 3件 |
2016年 | 3件 |
2017年 | 3件 |
2018年 | 2件 |
2019年 | 2件 |
外務省の統計によれば、フィリピン在留邦人は2018年現在で約17,000人ですので、10万人当たりの殺人発生率は18.8人。
日本国内での殺人発生率(10万人当たり0.3人)はもちろん、フィリピン全体の発生率(同6.5人)と比較しても、突出して高い数字です。
在フィリピン日本大使館によると、殺害された日本人の多くが中高年の男性で、商売上のトラブルか恨みが原因です。
フィリピンで犯罪が多い理由
凶悪な犯罪が多い理由は、貧困と、銃器が容易に入手できる社会に起因します。
フィリピン国民の2割は、一日1.75ドル(約200円)で暮らす貧困層です。
貧困層には仕事がありませんので、1万円程度の僅かなお金でも生活苦から逃れるために殺人を請け負う人間がいます。
銃器は一般市民でも、警察への登録・許可制度に基づく合法的な所持・携行が認められていて、スラムでは闇の売買も行われていますので簡単に手に入ります。
また、事件が起きてもフィリピンの警察は犯人を逮捕したり犯行を未然防ぐ仕事をしません。
逆に、外国人を騙したり脅かして、金品を巻き上げるような悪徳警官も少なくありません。
大抵の外国人は、制服を着た警官から何かを言われると怯えてしまい、言われたとおりに従ってしまいます。
警官は、いちばん人をだましやすい職業なんです。
フィリピン人の性格も、犯罪の多さの一因です。
フィリピン人は意外と臆病で、面と向かって反論したり、自分の本心を相手に言うことができません。
そして、相手から言われた言葉に対して、あとから恨みつらみが沸々とこみあげてきて仕返しを企てます。
犯罪を犯す人間に倫理やモラルはありません。
短絡的な行動で、自己満足を得ようとするのです。
事件に巻き込まれないための注意点
最後に、邦人がフィリピンで事件に遭ないために気を付けたいことを4つ紹介します。
金銭トラブルを避ける
殺人に発展する事件で多いのが、ビジネス上の金銭トラブルです。
特に不動産や利権に関係することは多額のお金が絡むため、人を雇って短絡的に相手を殺してしまうような、殺人事件が起こりやすいです。
フィリピンでビジネスを行う場合は、当該案件に詳しい弁護士に相談するなどしてトラブルのリスクを減らすよう心がけてください。
また、現地の人たちとの良好な関係づくりに努め、多少の理不尽なことにも腹を立てず、寛容な気持ちで対応してください。
フィリピンでは、日本のビジネス常識は通用しません。
恨みを買わない
フィリピン人を、大声で叱ったり怒鳴りつけたり、バカにしたような暴言を履く行為は絶対にしないでください。
フィリピン人は恥をかかされることを最も嫌い、恨みを買う原因となります。
人前で叱られたり暴言を履かれたらプライドはズタズタ。
その場ではなにも言い返してこなくても、まず間違えなく、後からなんらかの仕返しをされます。
その仕返しも、暴力や殺人など日本では考えられないようなレベルのものです。
相手を注意するときは、周りに人がいない場所で、かつ、優しい言葉遣いで話をしてください。
お金がある素振りをしない
当たり前のことですが、強盗はお金持ちを狙いますので、お金を持っているような素振りを見せてはいけません。
たとえ顔見知りのフィリピン人でも、お金の話をするときは十分注意してください。
路上でスリの被害に遭う程度でしたらまだ良い方ですが、自宅に押し居られたり、外で待ち伏せされたら、お金だけでなく命にかかわる事件になります。
窃盗や強盗は、予めターゲットを絞って犯行におよぶケースがほとんどです。
また、短期滞在の観光客も絶好のターゲットになります。
観光客への犯罪で、もし捕まったとしても、観光客は取り調べ期間中や裁判まで、現地に滞在することができないので、結局無罪釈放。
犯人はそんな事情をよく心得ていますので、観光客は狙われやすいんです。
観光でフィリピンを訪れる方は、いかにも観光客っぽい服装は避け、目立たない格好を心がけてください。
邦人に注意する
実は日本人がいちばん騙されやすいのは日本人だと言われています。
フィリピンに来たばかりで現地の事情をまだ良く知らない日本人は、現地に滞在している邦人を頼りにします。
言葉が通じて、色々なことを知っている日本人は頼りになる存在ですが、邦人同士のトラブルが多いのも事実。
一部の邦人ですが、そんな日本人に悪意を持って近づき、金儲けや金品をせしめる行為を犯している人間もいます。
不動産やリゾート施設の購入話を持ちかけてきたり、ビジネスの提案をしてきたり、クレジットカードを貸してほしいなどと個人的な相談をしてきたりと、その手口は様々。
ほとんどは、フィリピン人と結託して同胞から金を巻き上げようとしている、現地在住の日本人です。
相手が日本人だからと気を許さず、本当に信頼できる人物かどうかをしっかり見極めてから付き合うようにしてください。
犯罪から身を守る努力
戦争と平和、個人の安全、そして自然災害のリスクの3つの指数を集約し、その国の安全度を評価した「世界で最も安全な国ランキング2021」(世界経済フォーラム グローバル平和研究所)で、フィリピンは134位でした。
つまり、フィリピンは世界で最も危険な国のひとつとして評価されているのです。
ここに挙げた注意点以外にも、詐欺や性犯罪への対策など、邦人が気を付けなければならないことはたくさんありますが、いちばん重要なことは、命にかかわるような事件に巻き込まれないことです。
- 金銭問題を起こさない
- 怨念を買うことを避ける
- 身の危険を感じたら抵抗しない
フィリピンに行く方は、短期長期にかかわらず、この3つをいつも心に留めておいてください。
フィリピンの中流以上の家庭の家は、高い塀に囲まれ、入口には防犯カメラが備え付けられています。
それほど、個人個人が犯罪から身を守る努力をしなければ、生きていけない社会なんです。