会社員だった人が海外移住をするときに、しておくべき保険や年金の手続き、税金の支払い、そして銀行口座の維持方法まで、実際に脱サラしてフィリピンへ移住した僕の経験を基にまとめて解説します。
この記事を読めば、移住前にしておくべき手続きがわかります。
尚、これらの手続きは住民票を抜いて海外へ転出する非居住者が対象になり、住民票を日本に残したまま移住する方は不要です。
目次
非居住者になる方が海外移住の前に行う手続き
住民税
会社勤めの方は、会社で住民税や所得税の処理をしてくれますので、税金の支払いは普段ほとんど意識したことがないと思います。
でも、退職すると前年分の住民税は自分で納付しなければなりません。
住民税は、1月1日の時点で日本に住民票があった人を対象に、前年分を支払うしくみになっています。
前年の住民税は6月に確定し、税務署から通知が送られてきますので、税務署に出向き、一括払いか分割を選択の上、納付します。
海外移住の場合は、頻繁に日本へ戻ることはできないので、基本的に一括で納付する人が多いですが、分割でもかまいません。分割の場合は6月から翌年5月まで、毎月支払うようになります。
尚、1月から5月の期間で離職および海外へ移住する方は、その間に納税すべき額が確定しないので、移住する前に税務署に相談してください。僕の場合は、早期の納税ができました。
準確定申告
離職から出国するまでの期間の確定申告は個人で行うこととなります。
例えば3月に退社し、5月に出国する場合だと、4月と5月分の確定申告を翌年の2月16日から3月15日の期間内に税務署へ提出します。
しかし、海外に移住すると日本での申告や納税の手続きがスムーズに行えないため、それらの手続きを代理で行ったり、税務署からの書類を受け取ってくれる納税管理人を選出し、出国日までに税務署に届けなければなりません。
納税管理人は特別な資格は不要ですので、通常は家族や親せきに依頼をするケースが多いです。
僕の場合は、会社からの給料以外、収入はありませんでしたので、出国前に健康保険支払い票 国民年金支払い票、そして源泉徴収票を税務署に提出し、準確定申告を完了しました。
国民健康保険
日本の国民健康保険は、住民票を抜いた時点で解約となりますので、民間の海外保険に加入する必要があるのですが、海外保険は基本的に短期の旅行者を対象としているため、加入期間は最長でも6か月から1年で、更新不可や移住者は申込不可としている保険会社も少なくありません。
よって、長期の移住を考えている方は、移住先の保険会社と契約するようになります。
また、国民健康保険を解約すると、日本に一時帰国して通院した場合、医療負担は10割になりますので、定期的な検診や治療が必要な方は住民票を日本に残し、国民健康保険も解約せず移住するのも選択肢の一つです。
但し、その場合は海外に居住していても住民税と保険料を払い続けなければなりません。
年金
60歳未満の方は年金への加入義務がありますが、住民票を抜き非居住者となった場合、60歳未満でも年金の支払いは任意となります。
すでに25年以上、年金を支払っていた僕は、最寄りの年金事務所に行き、今後も加入しつづけるのと抜けるのではどちらが得策か、職員の方に確認しました。
年金事務所の回答は、「今後も10年以上年金を支払うのであれば加入を継続した方が良い」とのことでしたので、僕は支払いをストップしました。
尚、離職してから海外へ転出するまでのあいだ、60歳未満の方は、たとえ数か月間でも、その間は国民年金に加入しなければなりません。
加入に必要な書類は、医療保険の資格喪失証明書、離職票、そして免許証などの身分証明書です。
海外転出届け
出国日の14日前までに、現在お住いの地域の役場で、海外転出届の手続きを行います。
海外転出届に必要なものは、運転免許証など本人確認資料、印鑑、印鑑証明、マイナンバーカード、また国民健康保険に加入している方は保険証です。
役場の混雑状況にもよりますが、通常は小一時間で完了します。
マイナンバーカード
出国前に役場の戸籍課へ、通知カードまたはマイナンバーカードを返納します。返納した時点でカードは失効しますが、個人番号は変更されませんので、ひきつづき番号は有効です。
海外から戻り日本の居住者となったら、役場へ転入届を出す際に、改めてマイナンバーカードの交付申請を行います。
運転免許証
非居住者になっても、すでにお持ちの運転免許証は有効で、更新もできます。
転出後、日本での一時滞在先が現在免許証に記載されている住所と異なる場合は、次回更新時に、一時滞在先の住所への変更手続きを行います。
その際は、一時滞在先を証明するために、本人宛の郵便物や世帯主が作成した証明書の提出が必要になります。
一時滞在先が免許証に記載の住所と同じ場合は、届けは不要です。
尚、住所変更手続きは出国前にする必要はなく、次回更新時に行えば大丈夫です。
銀行
日本の銀行口座は、原則、国内在住者へのサービスとなっていますが、非居住者の手続きを行うことで、口座は維持され、一部のサービスもそのまま利用できます。
但し、非居住者になると、日本国内の口座への振込み手数料が海外送金と同じ扱いとなり高額になったり、事前に登録していた振込先へしか送金ができなくなったり、また、海外への送金ができないなど、かなりの制限がかかります。
クレジットカードなどの引き落としは、いままでどおり可能です。
銀行によって、非居住者向けのサービスが異なりますので、詳しくは各銀行に問い合わせてください。
尚、住民票を日本において海外へ移住する方は、いままでどおりのサービスが受けられます。
まとめ
住民票を抜いて海外に移住される方の、出国前にやるべき主な行政および税務上の手続き。
- 離職から出国までの期間の住民税および所得税の納付、または申告
- 国民健康保険は自動的に解約される
- 年金を60歳以降も支払いつづけるかどうかを検討する
- 海外転出届およびマイナンバーカードの返納