ある程度のお金の蓄えを持って海外に移住したはずなのに、移住後にお金がどんどん目減りしていき、結局、日本へ帰国してしまった。
こんな海外移住の失敗例は少なくありません。
この記事では、フィリピンに移住した最初の年に500万円をつかってしまい後悔した僕が、海外移住でお金を減らす人の特徴的な行動と注意点を紹介しますので、これから海外移住を考えている人は参考にしてください。
物価の安い東南アジアでも、生活のスタイルによっては日本に住んでいた時よりもコストがかかります。
目次
海外で日本と同じ生活をしたら失敗
老後の移住先として人気の東南アジアは物価が安く、僕が住んでいるフィリピンも日本の物価の半分程度ですので、現地の人たちと同じような家に住み、同じような食事を摂っていれば、すごく安上がりに暮らせます。
でも、注意したいのは、あくまで現地の人たちと同じレベルの生活なら、と言うこと。
最初は物珍しかった現地の食事もすぐに飽きてしまい、和食が食べたくなるでしょう。
現地のローカルレストランの食事は200円もあれば足りますが、日本食レストランで、たとえば天ぷらや刺身の定食を注文したら1,200円と、その差は1千円。
それが月に1回2回なら大したことはありませんが、一度、日本食を食べてしまうと、日本食が恋しくなり週に何回も通うことになるので、それだけで数万円の出費になります。
家賃は平均すると日本よりも4割安いですが、広さやロケーション、また、設備などにこだわっていくと、日本の家賃より高くなり、都心部の2DK〜2LDKになれば10万円~20万円はします。
まして、室内に高級な家具やバスタブを備え付けるなど、日本のマンションをイメージして、あれやこれやと充実させていくととんでもないお金がかかります。
東南アジアの国ではシャワーがつかわれているので、部屋にお風呂はありません。
僕は、借りていた一軒家にバスタブを設置しようと考えたのですが、工事費だけで20万円と言われ断念しました。
その国の消費者物価を見て「これなら大丈夫」と考え、海外移住に踏み切る人も少なくありませんが、それは、現地の人たちと同じレベルの生活をした場合だと言うことを意識しておかないと、あとから後悔します。
海外移住で資産を減らしてしまう人の特徴は、日本と同じような生活を求める人です。
日本よりお金がかかる製品とサービス
東南アジアの平均的な物価は安いですが、中には日本よりも高額な製品やサービスもあり、特に電化製品や自動車などの輸入品は高いです。
東南アジア諸国では、自国の製品が少なく、家電製品の多くは海外からの輸入のため、最大65%の関税がかかります。
つまり、日本で1万円の製品がフィリピンでは16,500円。
フィリピンでもパナソニックやソニー、またサムスンなどの人気ブランドの家電は販売されていていますが、日本で購入する金額の1.5倍はします。
僕は冷蔵庫と洗濯機がサムスン、エアコンはパナソニックを購入しましたが、それぞれ10~15万円でした。
支出を抑えるため安価な東南アジア製を購入すると、すぐに壊れて作動しなくなり、そのたびに修理代がかかります。
自動車もトヨタや日産、三菱などの日本車が販売されていますが、新車ですと最低でも150万から200万円はします。
また、電気代やガソリン代などのエネルギー費用は、日本よりも2割ほど高いです。
消費者物価とは、極端に安いものから高額な製品までをならした平均の金額ですので、自分が購入する製品やサービスによっては、日本よりもコストがかかることを覚えておいてください。
浪費で失敗する人
念願だった海外生活が実現しても、いざ移住してみると意外とやることがないものです。
最初の数か月間は住まい探しや各種の契約などで慌ただしいですが、それを過ぎると時間を持て余すようになります。
暇を持て余した中高年の中には、昼はゴルフ、夕方からバーや居酒屋で飲酒、そして、ときどきKTV(カラオケ)に行って女の子と遊ぶ。こんな生活を送っている人も少なくありません。
この生活をした場合のコストをザックリ計算すると、ゴルフのプレー代が15,000円、飲酒代が2,000円、KTVは店外デートなしで4,000円。合計すると21,000円にもなります。
気づいてみたらアソビやレジャーに毎月10万円以上のお金をつかっていたと言うことも珍しくありません。そして、浪費癖はなかなか直らず、お金はみるみる減っていく。
せっかく海外に移住したのに、結局、日本へ帰国して仕事探しを始める人もいます。
インフレで貯金が目減り
経済成長が目覚ましい東南アジア諸国は、経済の発展と比例して毎年物価も上昇しています。
東南アジアの移住先として人気のある、マレーシア、フィリピン、インドネシアと、日本の物価上昇率をご覧ください。
2010年を100とした場合、東南アジア諸国は10年間で2割から5割も物価が上昇しています。
出典:IMF(国際通貨基金) 世界の消費者物価上昇率 2020年10月発表
モノの値段が上がっても収入があり、その収入も上昇すれば問題ありませんが、持っているお金の価値は実質的に目減りしていきます。
逆に、日本はここ10年で5%しか上昇していませんので、日本で生活していた方が、いま持っている預貯金の目減りは少ないことになります。
物価上昇率は年に数パーセントですので、単年ではあまり気づきませんが、移住生活が長くなるほどダメージが大きくなりますので、物価の安さと現在持っている預貯金だけを考えて海外移住を決意すると後悔することになります。
移住先の為替レートに注意
日本にある現金を移住先の海外に移動させるときは為替の影響を大きく受けます。
僕がフィリピンに移住した10年前は1ペソが1.75円でしたが、2021年1月現在では2.16円です。
例えば100万円の現金を日本からフィリピンへ移動させる場合、為替が1.75円なら571,428ペソとなり、現在の2.16円なら462,962ペソにしかなりません。
その差108,466ペソを日本円に換算すると234,000円も違うことになります。
国 | 最円安 | 最円高 |
フィリピン | 1ペソ=1.86円 | 1ペソ=2.79円 |
タイ | 1バーツ=2.46円 | 1バーツ=3.69円 |
マレーシア | 1リンギット=24.17円 | 1リンギット=35.08円 |
インドネシア | 1ルピア=0.0066円 | 1ルピア=0.0102円 |
東南アジア諸国では為替が毎月変動します。そして円高の時に資金を移動すると損をします。
また、資金移動の際には送金元の日本の銀行と送金先の移住先の銀行以外に、両行をつなぐ仲介銀行と言う存在があり、送金手数料はそれぞれの銀行で徴収されますので、頻繁に送金をしていると送金手数料だけで数十万になってしまいます。
海外移住で生じる年金額の差
国民皆年金制度の日本では20歳から60歳まで、自営業者は国民年金へ、会社員は厚生年金への加入義務があります。
住民票を抜いて海外へ移住する場合、加入の義務がなくなり、また、年金を受け取るのに必要な受給資格期間(2017年の法改正で10年間に短縮)にもカウントされます。
しかし、年金は加入期間の平均収入に応じて額が決まりますので、海外移住後の受給資格期間はゼロ収入として計算され、65歳から受け取れる老齢年金の額が減ることになりますので気を付けてください。
60歳以上の方や、海外に骨をうずめる覚悟で移住をする方はそれほど問題ありませんが、60歳以下の方は、年金機構から送付されるねんきん定期便で、将来の受け取り見込み額を確認の上、任意で60歳まで年金を支払いつづけるかどうかを検討してください。
総務省「2019年 家計調査(家計収支編)」によると、60歳以上の単身者は月15万1800円、夫婦二人の場合は月36万1千円の生活費が必要となっています。
【まとめ】お金が理由で移住したら失敗する
海外移住をしてみたものの、後悔して日本へ帰国してしまう人は少なくありません。その原因のひとつがお金の問題です。
これから海外移住を考えている方は、お金のことを十分に考慮したうえで判断してください。
- 東南アジアで日本と同じ生活水準を求めらた、日本の1.5倍以上のコストがかかる
- 東南アジアの物価上昇率率は毎年2%~5%。日本にいた方が預貯金の価値は下がらない
- 夜遊びや飲酒、レジャーを繰り返せば数年後にはお金がなくなる
海外移住歴が長い人ほど、移住後も安定的な収入を確保し、また、現地の生活レベルに合わせた暮らしを営んでいます。